「居住権の申請は冒険者ギルドからでもできるから、こちらに関してはもうこれで大丈夫ですね」
ルルモアさんはそう言うとね、今度はバーリマンさんの方を見てこう聞いたんだよ。
「バーリマン様。先ほどお話頂いた屋敷についてなのですが」
「ああ、そうね。こちらもルディーン君が買取の話がまとまらなければ、奴隷引き取りの手続きはできないわね」
僕がお家を買ってからじゃないとこれ以上のお話は続けられないでしょ?
だからルルモアさんは、バーリマンさんにさっきお話してたお家はいくらなの? って聞いたんだ。
そしたらバーリマンさんが、
「本来なら2000万セント以上で売らないとダメなんだろうけど、相手がルディーン君だから1300……いいえ、1200万セントでいいわ」
にっこり笑いながらそう言ったもんだから、ルルモアさんはびっくりした顔で固まっちゃった。
「金貨1200枚とは、ギルマスも思い切ったのぉ。手続きの金も含めると赤字ではないのか?」
「どうでしょう? 何とかトントンくらいで納められるとは思うのですが」
でもね、それを聞いたロルフさんは、すっごく安く売るんだねって言ったんだよ?
そしたらバーリマンさんが、それでも多分損はしてないから大丈夫だよって。
「いやいや、待ってください。内壁の中の話じゃないですよね?」
そんな風にバーリマンさんたちがお話をしてると、ルルモアさんが慌てたようにこう聞いたんだ。
でもバーリマンさんは、何でそんな風に聞かれたのか解んなかったみたい。
「ええ、そうよ。場所はさっき話したじゃない」
「あの土地、本来なら2000万セントもするのですか……」
「それはそうよ。商業地区の端とは言え、一等地には変わりないもの。それにこの冒険者ギルドに匹敵するくらい大きな土地なんだから、そんなのは当たり前でしょう」
「なんと。ここと同じくらいの土地を、ルディーン君に譲ると言うのか?」
バーリマンさんは何でそんな事を聞くのかなぁ? って不思議そうな顔をしたんだよね。
けど、そしたら今度はお爺さん司祭様がびっくり。
さっきお話してたとこって、そんなに広い場所だったのってバーリマンさんに聞いたんだ。
「ああ広いと言っても、館自体はそれほど大きくはないのですよ。元々は館と同じ敷地内に商会用の建物を建てる予定だったようですから」
そしたらバーリマンさんは、場所は広いけど建ってるお家はそんなにおっきくないから心配しなくっても大丈夫だよって笑ったんだけど、でもお爺さん司祭様はそんな事を言ってるんじゃないよって。
「流石にそれほど大きな場所では、いくら館が小さくとも管理が大変ではないか」
「ああ、なるほど。確かにそうですわね」
広い空き地があるなら、そこをちゃんとしとかないとすぐに草がいっぱい生えてきちゃうでしょ?
お爺さん司祭様がそれを教えてあげると、バーリマンさんはちょっと困った顔になっちゃったんだよね。
でもそんなバーリマンさんに、ロルフさんが大丈夫だよって笑ったんだ。
「ああ、それならばその土地の管理はわしがやろう」
「伯爵がですか?」
「うむ。ルディーン君が買う土地じゃが、広さ以前に立っている館自体の管理がこの娘らにはちと荷が重いのではないか?」
ロルフさんはね、僕が買うとこは元々貴族が住むつもりで建てたお家だから、ちゃんとした人が管理しないとすぐにダメになっちゃうよって言うんだ。
「確かにきちっとしつけられたメイドがいなければ、館の管理は難しいかもしれません」
「であろう? わしはギルマスがあの土地の事を口にした時から考えておったのじゃよ。もしあそこを買うのであれば、わしのところにおるメイド見習いを派遣しようとな」
僕がイーノックカウにキャンプで飛んでくるときって、いっつも東門の外にあるロルフさんちのお部屋を使わせてもらってるでしょ?
あそこって他の街から来たお客さんが泊まるためのお家なんだけど、ロルフさんちに新しく来たメイドさんや使用人さんたちを教える場所でもあるんだって。
だからね、そこから何人かメイドさんをつれてったらどうかなぁってロルフさんは言うんだ。
「家の中の事であれば別館でもしつける事はできる。じゃがメイドの仕事の中には、街に出るものもいくつかあるであろう。それを教える場として考えると、あの場所はおあつらえ向きなのじゃよ」
「なるほど。それをさせてもらう代わりに、あの場所を伯爵が管理するとおっしゃるのですね」
「うむ。ルディーン君、どう考えてもこの娘らだけでは館の管理は無理じゃ。それをやる代わりに、うちのメイドたちに勉強の場を貸してはもらえぬかのぉ」
「ロルフさんちのメイドさんたちがお勉強に使うの? うん、いいよ」
ロルフさんちのメイドさんたち、僕がジャンプで飛んでくといっつも助けてくれるでしょ?
そのメイドさんたちのお勉強の為だったら、ダメなんて言う訳ないよね。
「そうか。ではギルマス、管理はうちの者がするのでその問題もクリアじゃ」
「はい、解りました。ではこれで館の話も終わったので」
「いや、まだ終わってはおらぬであろう?」
買ったお家をどうするのかも決まったもんだから、バーリマンさんはこのお話を終わらせるつもりだったみたい。
でもね、そこでお爺さん司祭様がちょっと待ってって。
「ルルモアと言ったか。ちと訪ねたいのだが、館の値段は1200万セントだと申しておったな。その金も、先ほど話しておったブレードスワローの報酬だけで賄えるのかな?」
「えっと、その金額を含めても依頼の報酬とブレードスワローの代金で賄えない事は無いのですが」
お爺さん司祭様は、ルルモアさんにお家もブレードスワローん時のお金で買えるの? って聞いたんだ。
そしたら買えない事も無いんだけどって言いながら、ルルモアさんはバーリマンさんの方を見たんだよね。
「それについては私からご説明しますわ」
それを見たバーリマンさんは一回うんって頷くと、お爺さん司祭様に説明を始めたんだよ。
「実はルディーン君が先日発明したクーラーと言う魔道具がありまして」
「クーラー?」
「あのね、司祭様。僕んちにお部屋を涼しくする魔道具、あるでしょ? あれの事だよ」
「おお、あれか。して、そのクーラーがどうしたのだ?」
バーリマンさんはね、それを特許申請したもんだから、それを作らせてって帝国中のお店から問い合わせがイーノックカウの商業ギルドに来てるんだよって教えてくれたんだ。
「ただ、その時に発生する特許料が現在使われる事なくたまり続けているので何とかしてほしいと、冒険者ギルドが言われているそうなのです」
「なるほど。ではその金を土地の購入資金に使いたいと言うのだな」
「はい、仰る通りです」
お爺さん司祭様はね、バーリマンさんにそうだよって言われたのになんでか不思議そうな顔をしたんだ。
だから僕、聞いてみる事にしたんだよ。
「ねぇ、司祭様。何でそんな変な顔、してるの?」
「いやな、魔道具の特許料というものは商業ギルドの管轄なのだ。だからその金は冒険者ギルドではなく商業ギルドの預金に入っておるはずなのだが……もしや冒険者ギルドの預金に入るようになっておるのか?」
「あっ、いえ。そのお金は商業ギルドの預金に入っています」
ルルモアさんがそう答えると、お爺さん司祭様はもっと変な顔になって何で? って聞き返したんだ。
「ではなぜ冒険者ギルドにそのような話が来ておるのだ? 商業ギルドで運用するなりすればよいだけの話ではないか」
「それができないから、うちへの苦情と言う形になっているのです」
ルルモアさんはね、ギルド預金の運用は本人がいいよって言わないとできないんだよって教えてくれたんだ。
「ルルモアさん。僕、商業ギルドに使っちゃダメなんて言わないよ?」
「ええ、それは解ってるわ。でもね、もしそれをしようと思ったら、何かあるたびにルディーン君が住んでるグランリルの村まで商業ギルドの人が行かなくてはいけなくなってしまうのよ」
お金っていっぱいあると全部いっぺんに使う事なんてないでしょ?
だから普通はいろんな事に使おうとするんだけど、それだと使おうと思うたんびに僕んとこまでイーノックカウから使っていい? って聞きに来なくちゃダメなんだって。
でもね、それを聞いたお爺さん司祭様は、それは変だよねって言うんだ。
「ギルドが預金の運用をする際、いちいちそのような確認をしてくるなどと聞いた事が無いのだが……なぜルディーン君の場合はその様な事になっておるのだ?」
「ああ、それはですね。ルディーン君が商業ギルドに加盟していないからです」
ギルドに入るとね、それだけで預金を運用してもいいよって言った事になるんだって。
でもさ、それだったら商業ギルドに入ればいいだけだと思うんだけど?
そう思った僕は、ルルモアさんに聞いてみたんだよ。
そしたら、
「ルディーン君は商売をやってないから、商業ギルドに入れないのよ」
だって。
そっか、商業ギルドって商売をしてる人が入るとこだもん。
僕、冒険者っぽい事はしてるけど商人みたいなことはしてないから、冒険者ギルドに入れても商業ギルドには入れないね。
そう思ってうんうんって頷いてたんだけど、
「なんだ、それならばルディーン君の商会を作ればよいだけではないか」
それを聞いたお爺さん司祭様がこんな事を言い出したもんだから、僕たちはみんなすっごくびっくりしたんだ。
前に貴族や大商人などのお金持ちが住んでいる内壁の中は、小さな家を買うだけで1500万セントほどかかると書いたと思います。
だからルルモアさんは本来なら2000万セントはすると聞いてびっくりしたんですよね。
でもだったら普通の土地を買えばいいと言う話になりますよね? ところがその場所を探すのが大変だったりします。
と言うのも、便利な場所は当然他の人が買ってしまっているし、かと言って墓地の近くとか治安が悪い所なんかだとロルフさんとバーリマンさんが許してくれるはずがありません。
そして無理にでも探そうとすると、前にバーリマンさんが言った通り足元を見られてとんでもない金額で買わされることになってしまいます。
これが賃貸でもいいとか、今で言うマンションの一室だけを買えばいいと言うのであれば結構あるのですが今回はそれではだめなんですよね。
と言う訳で、いろいろとロルフさんが理由をつけてでもこの広くて使い辛い場所にルディーン君の家を作ろうと思っているわけです。